目印は白帽
校長 奥崎敏之
毎朝、私が校門の前で生徒を出迎えるときの目印になっている白帽、実は道東の高校に初めて勤めたときから30年を超える習慣になっています。その高校は農業科がある学校で、遠くから来る生徒が入る男子寮があり、新卒の私は、あまり先生方から人気のないその寮の世話役(舎監)になれということになりました。
舎監はたいへんな仕事で、学校の授業が3時過ぎに終わったら、その足で寮に行き、その日の泊まりの先生が来るまでの時間、寮生とともに過ごします。また、朝は泊まりの先生が出勤の準備ができるように、朝7時過ぎに交代に寮に向かって、寮生たちを学校に送り出し、火事などが起きないか見回りをして9時過ぎに出勤し授業するという仕事でした。
当時の寮生は、髪はリーゼントで短ラン・ボンタンは当たり前、上級生が下級生をたたいたり、舎監の目を盗んで飲酒や喫煙など荒れた生活態度となっている生徒もたくさんいました。(30年前の当時は…ですよ ^^;)
毎日、生徒との激突を繰り返す中で悟ったことは、建前で指導しても生徒には全然響かず、本音で話し、本気で伝えることの大切さでした。そして、彼らと日々を重ねる中で、今までの偏狭な自分には見えていなかった彼らの寂しさや辛さ、本当はすごくいい奴なんだということも、次第に感じられるようになりました。
午後3時過ぎ、いつしか白い帽子を被って寮に向かうようになりました。白帽は目立つので、遠くから見つけることができます。寮生がそれを見つけて、悪いことを止めて欲しい。君たちの事が大好きで本当は指導なんてしたくないんだという気持ちが伝わって欲しい…。
生徒指導では、中学、高校と難しい場面に直面することもしばしばあります。でも、その本質には「生徒指導は子どもの理解に始まり、子どもの理解に終わる」ということが横たわっています。
君のことが大好きなんだといえるよう、一生懸命に君のことを理解しようと頑張ること。
この大切な営みを忘れないように、今日も白帽をかぶり校門に立ちます。